最近、ChatGPTのような汎用AIに、経営や事業の相談をする経営者が増えました。私自身もやります。深夜に思いついたことを、ぶつけてみる。便利な時代です。

ただ、しばらく使ってみて、多くの人が同じことに気づくはずです。

返ってくるのは、たいてい「まあ、そうだよね」という答えなのです。間違ってはいない。むしろ正しい。でも、当たり障りがない。自分でもうっすら分かっていたことを、きれいに整理して返してくれる。それ以上ではない。

なぜ、汎用AIに経営を相談しても、核心を突く答えが返ってこないのか。今日はその理由と、では何があれば違うのかを書きます。

■ 先に言っておくと、汎用AIにも良さはある

批判から入ると思われたくないので、先に良い点を。

汎用AIには、確かに助かる場面があります。私の場合、過去に自分が言っていたことや、忘れかけていた論点を、AIが覚えていて気づかせてくれることがある。「そういえば、前にこういう懸念を口にしていましたよね」と。これは素直にありがたい。人間は自分の過去を驚くほど忘れるので、記憶の補助線としては優秀です。

だから、汎用AIが無価値だと言いたいわけではありません。壁打ちの相手、思考の整理、抜けの発見。こういう用途では、十分に役立ちます。

問題は、その先です。「では、うちの会社は次に何をすべきか」という、経営の核心に踏み込んだ瞬間に、答えが急に薄くなる。なぜか。

■ 理由その1:自社のことを、十分に理解させていない

一番の理由はこれです。汎用AIは、あなたの会社のことを、ほとんど知りません。

「うちの売上を上げるには?」と聞いても、AIはあなたの会社の数字も、商材も、顧客も、現場も知らない。だから、世の中の最大公約数的な答え――「リピート率を上げましょう」「客単価を見直しましょう」――を返すしかない。正しいけれど、誰にでも当てはまる。つまり、あなたにとっては当たり障りがない。

「じゃあ、自社のデータを全部読ませればいいのか」。そう考える人もいます。でも、ここに二つ目の、もっと根深い落とし穴があります。

■ 理由その2:「時間」と「学習」が、セットになっていない

データを入れるだけでは、足りないのです。

仮に、自社の数字も、商材も、営業情報も、コンテキストも、全部AIに読ませたとします。それでも汎用AIへの相談が浅いままなのは、決定的な要素が欠けているからです。それは、「時間の流れ」と「学習」がセットになっていないこと。

どういうことか。

経営は、一回の質問と一回の答えで完結しません。打ち手を出す。実行する。結果が出る。その結果をまた理解させる。次の打ち手を更新する。市場が変われば、それも学習する。この終わりのないループを回し続けて、初めて答えの精度が上がっていきます。

ところが、汎用AIへの相談は、断片的な一問一答です。聞いて、答えをもらって、終わり。実行した結果がAIに戻ってこない。学習が回らない。だから、何度聞いても、毎回ゼロからの一般論しか出てこないのです。

これは、前に書いた「データ負債」の話とつながります。断片的な質問と回答を繰り返すだけでは、判断が積み重ならない。むしろ、つながっていない判断が散らばっていくだけ。ループがあって初めて、判断は資産になる。ループがなければ、断片はただ散らばり、ときに負債になります。

■ 理由その3:データに表れないものが、経営を左右している

そして、もう一つ。これが見落とされがちですが、非常に大きい。

経営の本当のボトルネックは、データに表れないことがよくあるのです。

たとえば、ある二つの部署の連携が悪く、それが全体の利益を圧迫している。数字を分析すれば「連携が悪い」という結果までは見えるかもしれない。でも、その本当の原因が「責任者同士の仲が悪く、口もきかない」ことだとしたら――それは、どんなデータにも表れません。

汎用AIは、こういう情報を持ちようがない。数字をいくら読み込ませても、「あの二人は折り合いが悪い」という事実は、データのどこにも書かれていないからです。でも、利益を本当に動かしているのは、しばしばこういう「データにならないもの」なのです。

ここを拾えるのは、現場に入って、人を見て、空気を読む存在だけです。AIだけでは、永遠に届かない領域があります。

■ では、何があれば「使えるAI」になるのか

ここまでをまとめると、汎用AIへの経営相談が浅いのには、三つの理由がありました。自社を理解していない。時間と学習のループがない。データに表れないものを拾えない。

裏を返せば、この三つを満たせば、AIは本当に経営に効く道具になります。

ひとつ、統合した自社データの上で学習していること。バラバラの数字をつなぎ、その会社固有の文脈の上で考える。

ふたつ、実行と学習のループが回っていること。出した答えを実行し、結果を読み、また更新する。一問一答で終わらせない。

みっつ、データに表れないものを、人が拾って組み込むこと。スタッフ間の関係のような、数字にならない真因を、現場に入る伴走者がAIに教え、カスタマイズしていく。

これが、私がHELM-AIPで実現しようとしていることです。汎用AIに自社データを足すだけではない。統合したデータの上で学習し、ループを回し、データにならないものは人が補い、そしてプラットフォーム自体が、その会社とともに成長していく。

この「ともに成長する」が肝です。汎用AIは、誰にとっても同じAIです。でも経営に効くAIは、その会社専用に育っていかなければならない。育てるには、データと、時間と、現場を知る人が要るのです。

ちなみに、この「全体をつないで、回し続けて、現場に深く入る」という発想の原型は、巨大企業や国家機関のデータ活用で知られるPalantirにあります。私はこの会社を、日本でほとんど誰も知らない頃に知る機会がありました(その経緯は別の記事に書いています)。

■ 最後に

ChatGPTに経営を相談すること自体は、悪くありません。思考の整理にも、忘れていたことの発見にも役立つ。私もこれからも使います。

ただ、そこから返ってくる「当たり障りのない答え」を、自社の正解だと思い込まないでください。それは、あなたの会社を知らないAIが出した、最大公約数にすぎません。本当に効く答えは、自社のデータをつなぎ、時間をかけて学習させ、データにならない現場の真実を人が補って、初めて出てきます。

もし「AIに聞けば経営が分かる」と感じ始めているなら、一度立ち止まってみてください。そして、こう問い直してほしいのです。「そのAIは、うちの会社のことを、本当に分かっているだろうか」と。

その答えがノーなら、そこからが本当のスタートです。一度、お話を聞かせてください。御社のデータをつなぎ、御社専用に育つAIを作るところから、HELM-AIPははじまります。売り込みではなく、まずは現状を整理する相談からで構いません。


▼ HELM-AIPの詳細・ご相談はこちら https://h-pirates.com/ja/services/helm-aip

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