複数の事業を持つ経営者には、避けて通れない悩みがあります。
どの事業に、集中すべきか。どれを伸ばし、どれを縮め、どれは畳むべきか。限られた人もお金も時間も、全部の事業に均等には注げない。だからどこかに張らなければならない。でも、どこに張るのが正解なのか、確信が持てない。
最近は、この問いをAIに投げる経営者も増えました。「どの事業に集中すべき?」「不採算事業は畳むべき?」と。
返ってくるのは、だいたいこうです。「利益率の高い事業に集中しましょう」「成長性で判断しましょう」。正論です。でも、これで事業の選択を決断できた経営者を、私は見たことがありません。今日は、なぜAIに聞いても事業の選択は決まらないのか、そして本当はどう考えるべきかを書きます。
■ なぜ、やめるべき事業を手放せないのか
そもそもの話をします。多くの経営者は、頭のどこかで「この事業は、もう厳しい」と分かっています。それでも手放せない。なぜか。理由は、たいてい数字ではなく、別のところにあります。
ひとつは、サンクコスト。これまで投じてきた時間とお金が惜しい。「ここまでやったのに」という気持ちが、撤退を引き止める。
もうひとつは、人です。その事業には、人が張り付いている。畳むとなれば、その人たちをどこに再配置するのか、あるいは辞めてもらうのか。それを決められない。だから事業ごと、宙ぶらりんのまま残してしまう。
そして、もっとも根が深い理由がこれです。やめるべき事業を手放せないのは、新たに集中すべき事業、新たに挑戦する事業が、ないからです。
行き先がないから、今いる場所を捨てられない。次に張る場所が見えていれば、人も移せるし、撤退も決断できる。でも、その「次」がないと、不採算と分かっていても、ずるずると抱え続けてしまうのです。
つまり、事業の選択は「どれをやめるか」から考えてはいけない。順番が逆なのです。
■ 「今の数字」だけで事業を選ぶと、将来を見誤る
もう一つ、AIや一般論の答えが危ういのは、たいてい「今の数字」で判断させようとするからです。「利益率の高い事業に集中」というのは、今の利益率の話です。
でも、今いい事業が、将来もいいとは限りません。逆に、今は小さくても、これから伸びる事業もある。事業の選択で本当に見るべきは、今の売上や利益ではなく、その先です。
確度を高めるために見るべきは、二つ。その事業のマーケットは、これから伸びるのか。そして、自社にそこで戦える競争優位性があるのか。この二つです。
今の売上・利益だけで事業を選ぶと、目先の数字がいい事業に資源を集中させ、将来の売上を作る準備を怠ることになりかねない。気づいたときには、稼ぎ頭が老いていて、次の柱が育っていない。これは、複数事業を持つ会社が陥りがちな、静かな失敗です。
「どの事業に集中すべき?」という問いに、汎用AIが答えられないのは、当然です。あなたの会社のマーケットの先行きも、競争優位性も、そして抱えている人のことも、AIは知らないのですから。
■ 私が実践してきた、事業選択の順番
では、どう考えるか。私自身が、複数の事業や案件を動かす中で、実践してきた順番を共有します。
まず、「やめる事業」から考えません。先に、追加する事業、あるいはピボット(方向転換)する事業を決めます。次に張る場所を、先に定めるのです。
そして、その新しい事業に、どの事業から人を当てるかを決める。ここがポイントです。私は、事業が増えても、その事業のために人を新規採用することは、基本的にしません。今いる人を、再配置する。
なぜか。ここに、数字には出ない、でも決定的に大事なことがあります。
状況が悪くなっている事業のメンバーは、たいてい気持ちが下がっています。どれだけ頑張っても伸びない事業の中にいると、人は消耗していく。そういうメンバーを、これから盛り上がりそうな新しい事業に再配置する。すると、モチベーションが転換するのです。沈む船から、上り調子の場所へ。人が、もう一度前を向く。
事業の選択は、ポートフォリオの組み替えであると同時に、人のモチベーションの組み替えでもある。撤退の判断も、人の再配置も、新しい挑戦も、全部つながっている。「次に挑戦する事業を先に決める」と腹を括った瞬間に、これらが一気に動き出すのです。
これは、財務諸表を読み込ませたAIには、絶対に出てこない発想です。
■ では、その「次の事業」は、どこから見つけるのか
ここで難しいのは、「次に挑戦する事業」を、どう見つけるかです。多くの経営者は、ここで手が止まります。日々の経営に追われ、新しい挑戦の種を探す余力がない。
私が作っているHELM-AIPには、この部分に対する、二つのアプローチがあります。
ひとつは、今ある事業を改善する提案。バラバラの数字をつなぎ、利益を下げている原因を特定し、現状の売上・利益を改善する策を出す。これは、これまでの記事でも書いてきたことです。
そしてもうひとつ、今回伝えたいのがこちらです。今の事業の枠を、少し超えた発想で、売上や利益を作る提案。たとえば、既存の顧客資産を、別の形で活かせないか。隣接する市場へ、展開できないか。持っているデータを、別の事業に転用できないか。
会社というのは、自分たちが思っている以上に、使われていない資産を抱えています。顧客、データ、ノウハウ、信用。それらは、今の事業の枠の中でしか使われていない。でも、少し枠を外して見ると、別の売上の種になることがある。
HELM-AIPは、この「既存の改善」と「枠を超えた提案」を、別々の機能として持っています。今を良くする提案と、次を作る提案。事業の選択に悩む経営者にとって、後者は「次に張る場所」を見つける助けになります。
ちなみに、この「全体をつないで、見えていなかった可能性を見つける」という発想の原型は、巨大企業や国家機関のデータ活用で知られるPalantirにあります。私はこの会社を、日本でほとんど誰も知らない頃に知る機会がありました(その経緯は別の記事に書いています)。
■ 最後に
「どの事業に集中すべき?」とAIに聞いても、答えは出ません。今の数字をもとにした一般論しか返ってこないからです。
事業の選択は、今の利益率で決めるものではありません。マーケットの先行き、競争優位性、そして抱えている人のこと。さらに言えば、「やめる事業」から考えるのではなく、「次に挑戦する事業」を先に決めること。次の行き先が定まれば、撤退も、人の再配置も、自然と動き出します。
もし今、「どの事業に集中すべきか」「この事業は畳むべきか」と悩んでいるなら、その問いを少し裏返してみてください。「次に、うちはどこへ張るべきか」と。
その答えを見つけるところから、一度お話を聞かせてください。御社の数字をつなぎ、今を改善する策と、枠を超えた次の一手の両方を見つけるところから、HELM-AIPははじまります。売り込みではなく、まずは現状を整理する相談からで構いません。
▼ HELM-AIPの詳細・ご相談はこちら https://h-pirates.com/ja/services/helm-aip
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